眠れない夜は愛しい雛を抱いて
少し意地悪をするつもりが、洗い立ての髪の匂いと身体から漂う石鹸の香りに自分が欲情してくるのがわかった。
「待っ……ここ、玄関……っ」
「ベッドまで待てない」
ネクタイを横に引き、首元を緩めると、雛子のパジャマのボタンをひとつ外す。
軽く鎖骨に吸い付けば白い肌に赤い痕がついて、身体の奥が熱くなってくる。
「鷹、哉さん……明るい、から」
「明るいから? 何?」
「は、恥ずかしいよ」
「今更だろう?」
雛子が強く拒む様子がないことを確認して、彼女のパジャマの中に手を入れた時だった。
足元に置いていた紙袋が、ゴトンと音を立てて倒れる。
その音に反応した雛子が床に視線を向けてハッとした。
「嘘っ、『十五代』のお酒?!」
「ん? ああ、さっき接待の帰りに頂いたんだ」
「これ、前から飲んで見たかったの!」
子供のように目を輝かせる雛子を見れば、際限なく甘やかしたくなるのはどうしたものか。
俺はベッド行きを遅らせることにし、雛子に向かって頬を緩める。
「今から、呑むか?」
「え、いいの? 鷹哉さんと一緒に呑みたい」
「わかった。ジャケット置いてくるよ」
「やった」
満面の笑みを見せる雛子を見ながら、俺は彼女のパジャマのボタンを上まで留め直す。
今夜は金曜日だ。
あとからゆっくり抱けばいい。
「お猪口出してくるー」
(ほんとに酒が好きだな)
紙袋を片手に、嬉しそうにリビングへ向かう彼女を見ながら、俺はふっと笑みを漏らした。
「今夜も長い夜になりそうだ」