隠れドS系御曹司は一目惚れで結ばれた彼女を溺愛して逃さない
「結愛、目が覚めた?」

 結愛はどこからか聞こえた羽琉矢の声に驚いて、弾かれたように顔を動かした。目は開いていたものの、夢の中を彷徨っているようで、覚束なくフワフワとしていたのだ。

 結愛の脇に立ち、見下ろす羽琉矢の顔を認めると、見慣れない場所だと思ったのか、確かめるように周りを見回した。

「ここは? それに……これは?」

 結愛は自身に視線を落とすと不思議そうに聞いてきた。結愛が着ていたのは見慣れないガウンだったからだ。

「ここは、庭が一番綺麗に見えるところかな」

 言われて結愛は庭へと視線を移した。さっきまでぼんやりと眺めていたせいで、景色など目に映らなかったが、改めて見てみると羽琉矢の言うとおりだった。

 深山にでも足を踏み入れたかのような渓流を中心に、自由に枝を広げた様々な種類の樹木が自然を彷彿とさせた。早春に咲く植物は控えめな色合いで野山で見かける花に似ていた。

 まだ春の初めだからだろう、木々の緑もほんの少し顔を出す程度。だが、本格的な春になれば、一斉に若葉を芽吹かせるのだろう。四季折々に表情を変えていく庭は、羽琉矢の目を楽しませているに違いない。

「それとそのガウンは僕ので、一緒にお風呂に入ったからね。裸のままでいるわけにもいかないし、とりあえず手近なものを着せたんだよ」

 夢想するようにうっとりと庭を見ていた結愛が、ギョッとしたように羽琉矢を振り仰いだ。

「お風呂?」

「そう。お互い汗かいていたからね。一緒にお風呂に入ればすっきりすると思って」

 羽琉矢はにっこりと笑った。

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