隠れドS系御曹司は一目惚れで結ばれた彼女を溺愛して逃さない
 結愛は当たり前のようにサラッと言われた言葉に硬直した。

 今、何を言われたんだろうか? お風呂って? お風呂……いくら考えても自分から入った覚えはなかった。

 そういえば、と記憶を手繰っていくと、お湯を浴びせかけられたような……湯船にも浸かったような……それから……記憶の断片が薄っすらと浮かんでくる。一緒にって、まさか……羽琉矢さんと? しかも、ガウンの下は、何も身に着けていない。

「きゃあ」

 朧げに浮かんだ出来事と現在の状況を理解すると悲鳴を上げて、結愛は顔を真っ赤にして手で顔を覆った。

 うそ。信じられない。恥ずかしくて顔を合わせられない。

 寝室では素肌を晒して全てを見られているのに、そうであっても、お風呂は別問題だった。

 しかも、お風呂での出来事はほとんど覚えていない。混沌とした意識の中で一体何をされたんだろう? 自分自身も何かしなかっただろうか? 

 聞くわけにもいかないし、その前にとても怖くて聞けない。何も分からないことで余計に羞恥心が増していく。
これ以上はないくらいに耳まで真っ赤にさせて、顔を隠してしまった結愛のかわいらしい姿に、羽琉矢は微苦笑する。今更なのに……

「手を離して?」

 羽琉矢は結愛の前で膝をつくと、結愛の手を顔からはがそうとした。けれど、結愛もよほど顔を見られたくないのか、いやいやをするように首を横に振って、中々手を外そうとはしない。こういう時って、けっこう力が強い。

 ちょっとからかってやりたかったけれど、お風呂での出来事は、自分の胸の中にしまっていた方が得策だろう。思わぬ一面も見られたし、それよりも気がかりなことを口にした。

「結愛、身体は大丈夫? 痛くない?」

 気遣うように心配そうに問う声に、結愛は恐る恐る手を外して、態度を一変させた羽琉矢の顔を窺った。目の前には彼の真面目な顏があった。

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