隠れドS系御曹司は一目惚れで結ばれた彼女を溺愛して逃さない
「いいさ。お前が一筋縄ではいかない、厄介なやつだということは知っているし、人の言うことを聞かない自己中なやつだということもね」

「ずいぶんな言われよう。こんなに素直なのに」

 羽琉矢は心外とばかりに口を尖らせた。
 拗ねたような表情をする時は一段と子供っぽく見える。とても成人男性には見えない。

 外見ばかりにとらわれ侮ったばかりに、倒産の憂き目にあった会社がいくつかある。それを知っている者達からは、猫の毛皮を被った狡猾な虎だと恐れられている。

「自分にだろ?」

 泰雅が間髪入れず言葉を発した。本当のことだ。

「そうだね、それについて否定はしない。そろそろ暖かくなってきたからね。冬眠も終わりかな? 確かに垣下にばかり押し付けてはかわいそうだね。近いうちに行ってみるよ」

「ああ、そうしてくれ」

 羽琉矢から、承諾の言葉を引き出した泰雅は胸をなでおろした。

「でも、大丈夫なのか? 急に外に出て」

 泰雅の顔が急に曇った。

「まあ、大丈夫じゃないのかな? 昔と違ってずいぶんと耐性も出来たしね。どうしてもダメなときはすぐに帰ってくればいいことだし、自分の会社が危うい雰囲気だったりしたら、それこそ考えないとね」

 さっきのお返しとばかりに少しの皮肉も込めながら、問題ないと羽琉矢は軽く肩をすくめて笑って見せた。

 人間はみな善悪の心を持っている。多少の差はあれ、誰でも表と裏の二つの顔を持っている。
 同情しているふりをして心の中では嘲笑うことも、同僚の成功を喜ぶ影で非難中傷も平気でやってのける。きれい事だけで人間は作られていない。

 もちろん、そうした人間ばかりではないこともわかっている。全ての人間に影響されるわけではない。
 ほんの一握りだ。 
< 11 / 89 >

この作品をシェア

pagetop