隠れドS系御曹司は一目惚れで結ばれた彼女を溺愛して逃さない
 だが、普通の人間より鋭敏に他人の感情を感じ取ってしまう羽琉矢には、負の感情に触れることはとても苦痛なことだった。

 今では人間はそういうものだと割り切ることもできるようになったが、それでも、御曹司でありながら一人暮らしをしているのは、人とは極力一線を画しておきたいとの表れでもあった。

 会社へ足を運ばないのもそうした理由からだ。出社せずとも経営に支障をきたさなければ、それが彼にとっては一番都合のよいことだった。

 泰雅もそうした性質を持っている。羽琉矢ほど諸に影響を受けたりはしないが、共に同じものを持っているからこそ、つかず離れず一緒にいられるのだ。

「無理しないように、無理しろよ」

「泰雅って容赦ないね。うちに来てもらうのは考え直そうかな。凄くこき使われそう」

「どっちがだよ。俺は雇われる身だからな。弱い立場だから、程々にしてくれよ」

「じゃあ、お互いさまに程々にってことだね。覚えていたらね」

 羽琉矢がにっこりと笑って一言つけ足した。

 その笑顔と一言が曲者だ。

 泰雅は羽琉矢の元でこき使われるさまが容易く想像できて、軽く眩暈を覚えた。早まったかもしれない。

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