隠れドS系御曹司は一目惚れで結ばれた彼女を溺愛して逃さない
「大学生も忙しいね。それじゃ、いつ会えるのかな?」

 穏やかな声音でにこっと微笑まれた。

 よかった。気分を害してはいないみたいだった。先約を優先するのは当然のことよね。いくら羽琉矢さんでも約束をドタキャンなんて、望むわけないわよね。

 結愛は羽琉矢の温和な態度に、大丈夫だと判断して油断してしまった。心の中で悩んだ末、導き出した答えを口にした。

「えっと……あの……新学期が始まったら」

 どんな返事が返ってくるのかとドキドキしながら、控えめな声でそっと羽琉矢の顔色を窺った。
 羽琉矢は眼前でびくついた結愛をじっと見つめる。

「新学期って、いつ?」

「四月三日です」

「一週間後?」

「そうです」

 羽琉矢は黙り込んだ。

 まさか一週間も会えないなんて、思ってもみなかった。

 そうか、そうなんだ。

 羽琉矢の頭の芯が急速に冷えていく。

「じゃあ、その日に会える? 大学からそのまま僕に会いに来てくれる?」

 表面上はあくまでも表情も声音も崩さなかった。

 羽琉矢の考え込むような沈黙が怖かった。

 もしも、承知してくれなくて駄々をこねられたらどうしようって、何か突拍子もないことを要求されたらどうしようって、気が気ではなかった。

 二転、三転して、未だに屋敷に留まっている経緯を考えると無理もなかった。

 すんなりと納得してくれた様子に、身構えていた分、肩透かしをくらったように拍子抜けしてしまったが……

 何はともあれ、このままスムーズに事が運んでくれれば何も言うことはない。



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