隠れドS系御曹司は一目惚れで結ばれた彼女を溺愛して逃さない
 泣き落としって、一体……

 祖母の性格を考えると想像できないが、涙で訴えなくてはならないような事だったのだろうか。
 しかも本人ではなく、泰雅に。

 心当たりがないわけではないのだが。

 でも、ちょっとおかしい。わずかに引っ掛かりを覚えて羽琉矢が聞いた。

「それはいつの話? パーティーはとっくに終わっているし、今のところ招待状は届いていないし」

「去年の暮れ頃かな」

「何で今頃になってそんな話をするのかな?」

 新年もとうに明けて今は三月の下旬、三か月は経っている。招待状の日程は年末年始にかけてだった。

「元々、伝えるつもりはなかったからな。話の流れでたまたま思い出したから言っただけだ」

「だったら、そのまま忘れてくれてよかったのに」

 泰雅のせいで思い出してしまった。

「そういえば……見合いの話とかなかったか?」

 きれいさっぱり記憶から消し去っていたのに。

「泰雅、その話をどこから聞いたの?」 

「いや、まあ……はっきりと聞いたわけじゃないけど、すごく良いお嬢さんがいるのにとか、祖母様が言っていたから、そんな話があったのかと思って。で、どうなんだよ」

 椅子の背から身を起して、興味津々に聞いてくる泰雅を、羽琉矢は冷ややかに一瞥した。

 血のつながりのある従兄弟であっても、必要以上にプライベートに踏み込まれるのは好きではない。

 これが他の従兄弟なら相手にしないところだ。



 しかし、泰雅は別だった。気乗りしないながらも話に付き合った。
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