隠れドS系御曹司は一目惚れで結ばれた彼女を溺愛して逃さない

誘いの果実②

 濃厚で甘美な蜜を溶かし込んだような香りが、結愛の鼻腔を刺激する。

 今の時期ならどんな果物? 苺? 確かに甘いけどこんなに香るもの? 他には……店にはたくさんの果物が並んでいるはずだったが、今が旬の果物はなかなか思いつかない。   

 花は? 椿も桜も木蓮もこんなに匂ったりしないと思う。

 だったら何だろう? 

 香りの正体を見てみたい。

 推理小説の中の犯人探しをしている時みたいな、分かるようで分からないもどかしさ。どこかにヒントは隠されていないか何度も読み返すみたいに、キョロキョロとあたりを見回して探してみる。 
 
 買い物に来たことなどすっかり忘れていた。

 歩くにしたがってだんだんと香りが強くなるような気がする。
 もう少しで分かりそう、少しずつ場所を移動しながら香りを辿っていく。

 やがて、長い塀が途切れた。と思ったら、門が見えた。

 閉ざされているはずの門が半分だけ開いている。


 ほんの少し中を覗くと、手入れされた樹木に沿って石畳みが続いていた。
 住居は見当たらない。もっと奥にあるのかもしれない。

「凄いお屋敷ね」

 道の端から端へと続く長いレンガ塀を見るとかなりの広さだ。門の先の見えない家屋も大きいのだろう。

 どんな人が住んでいるのかは知らないが、相当なお金持ちなのだろう。
 平凡な家庭に育った結愛には、関係のない世界だった。

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