隠れドS系御曹司は一目惚れで結ばれた彼女を溺愛して逃さない
 門の前を通り過ぎ、しばらく歩いていくと、あの香りがなくなっていることに気付く。

「いつの間にか消えちゃった」

 もしかしたら、香りのする場所を通り越してしまったのかもしれない。

一体、どこからだったんだろう?

 結愛はもう一度引き返してみることにした。

 なぜ、そこまであの香りが気になるのかわからない。ただ、無性に正体が知りたかった。

 辿っていくと、また門の前。

 さっきよりも強く甘い香りが漂ってくる。

「まさか、ここから?」

 たくさんの樹木が見える。中には香りを放つ樹木があっても不思議ではない。
 敷地には誰も見当たらないようだった。

 誰もいない。

 それが結愛を後押しした。

 少しだけお願い、香りの正体がわかればすぐに帰るから。

 誰とはなしに言い訳をしながら、一歩、足を踏み入れた。

 さっきよりも確かな香りが漂ってくる。

 甘い蜜が滴るような濃厚な香り。
 まるで結愛を包むかのようにあたりに充満する。

 この近くかも……

 わくわくしながらぐるりと一回転してみたが、それらしきものは見つからなかった。


 もっと奥かな。



 香りに誘われるように、あたりを窺いながら、また一歩、中へと進んでいった。

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