隠れドS系御曹司は一目惚れで結ばれた彼女を溺愛して逃さない
 外に出ると暖かな陽射しが結愛に降り注ぐ。 
 三月も終わりの頃、うららかな春の日和。
 花冷えと呼ばれるこの時季、いつもならコートの一枚も羽織るところだったが、今日は必要なさそうだった。

 マンションを出ると、車二台がかろうじて、すれ違えるくらいの狭い道が広がっている。街中から外れたここはとても静かだった。
 大学の近くに借りてもよかったのだが、車の往来の激しい騒々しい場所は落ち着かない。街中の住み慣れない場所よりも、実家に近い静かな環境を選んだのだ。
 電車やバスの本数も多いため、通学の便もよかったことも幸いした。

「外をのんびり歩くのも久しぶり」

 ちらほらと花びらをのぞかせる桜並木の遊歩道に出ると、どこからか鶯の鳴き声も聞こえた。天気の良い日が続けば、咲き始めた桜も満開になる日も近いだろう。

「お花見するのもいいなあ」

 結愛は桜を見上げた。
 
 一人っ子の結愛は両親から愛情いっぱいに育てられた。   
 大学進学も地元でと父親は切望していたが、一度親元を離れ自立してみたいと思ったのだ。
 両親のそばは幸せで何の苦労をすることもない。一人娘だから嫁ぐこともないだろう。婿養子を取るということは、両親から聞かされていることだ。

 進学先を考えているうちに思ったことは、今後家を出る機会はほとんどないということだった。ぬくぬくとした生活は楽かもしれないが、一度だけでいいから、自活というものをしてみたかった。
 大学を決め、両親に話した時、父親は反対したが、母親はあっさりと賛成してくれた。

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