隠れドS系御曹司は一目惚れで結ばれた彼女を溺愛して逃さない
驚いたように見開いた瞳が羽琉矢を見つめる。
屋敷に来るとしたら泰雅。家の者や会社関係の者でさえ、よほどのことでない限りこの家を訪れることはないというのに、突然の訪問者は見ず知らずの女性。
髪を無造作に後ろでまとめ、クリーム色のロングセーターにジーンズ、足元はスニーカー。
とてもラフなスタイル。
化粧っ気のない顔は、十代のようなあどけなさがある。女性というよりは少女といった方がふさわしい、素朴で純真な雰囲気を持っている結愛に見惚れた。
人がいる。男の人。
長いアプローチの石畳を歩いてくる間、誰にも会わなかったし、誰の気配もなかったから、まさか誰かいるなんて思わなかった。
周りを木々に囲まれていたから山道でも歩いているような気になって、人が住んでいるということなどすっかり忘れていた。
香りの正体を知りたいがために、大胆にもどんどんと奥へと進んでいった先で、突然開けた視界の中に飛び込んできたのは男性だった。
さらさらと流れる水の音が聞こえる。水の流れを遠くに聞きながら、見つけたのは和服姿の男性だった。
着物? 年配の男性なら見かけたこともあるが、若い男性の着物姿は初めて見た。浅緑の着物に濃藍の帯、半襟はごく薄い青茅色。白い足袋に雪駄。
年齢は自分と同じくらいか、一つ、二つ上かもしれない。
若いが着なれている風な堂にいった立ち姿。すらりとした体型に凛とした気品のある整った顔立ちに黒髪。
似合う。
新鮮な姿に結愛は見惚れていた。