隠れドS系御曹司は一目惚れで結ばれた彼女を溺愛して逃さない
 だが、体を地面に打ち付けるような衝撃は来なかった。

 羽琉矢が倒れてきた体をとっさに自身の胸に引き寄せたからだ。

 ふうっと結愛の耳元で息を吐く音が聞こえる。

 腰に腕を回されて、背中から抱きしめられている格好だった。

「ありがとうございます」

 あのまま転んでいたら、背中を打ち付けていただろう。下は石畳みだから無事ではすまない。
 それを思うとぞっとするが、助けてもらえてよかった。よかったけれど……


「あの、離してもらえませんか?」

 転ぶ心配はなくなったから、すぐに開放してもらえると思っていたのだが、羽琉矢の腕は腰に回ったまま、さらに抱き寄せられて体が密着してしまった。

 背中に羽琉矢の温もりを感じる。

 背中から抱きしめられるなんて初めてのことで、どうしていいのか分からない。ドキドキと鼓動が早まり、結愛の頬が赤く染まる。心臓が壊れそうだ。

「だめだよ。離したら逃げちゃうでしょ? せっかく捕まえたんだから。離さないよ」

 その言葉に結愛の体が竦んだ。赤くなっていた顔が瞬時に青ざめる。

 その様子を背後から感じた羽琉矢はくすっと笑った。

 警察に通報する気なんてさらさらない。反応を見たくてからかっただけだ。


 突然飛び込んできた可愛い獲物。


 どうやって捕獲しようか。

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