隠れドS系御曹司は一目惚れで結ばれた彼女を溺愛して逃さない
「あれ、冗談だから」

 何食わぬ顔で軽い口調で言うと、羽琉矢は逃がさないように結愛の頭と背中を抱え込む。

「えっ?」

 冗談って。急に何を言われたんだろう。
 訳が分からず顔を上げようとしたが、結愛の体は羽琉矢に抱き押さえられて動けない。

「警察に通報するって言ったこと。ごめんね。あれ、ウソなんだよ」

「ウソ? 本当に?」

 ウソなら、警察に連れて行かれない? 大丈夫なの? 許してくれるの?

「うん。僕だって警察の人間には会いたくないからね。通報なんてしないよ」

「本当に?」

「本当に、ホント。信じて」

 半信半疑な声で、何度も確かめる結愛に羽琉矢は苦笑を浮かべた。

 よかった。
 これで両親に心配をかけなくてすむ。はあ、本当によかった。羽琉矢に捕まってからずっと生きた心地がしなかったから。

 抱きしめた体から緊張が解けたのがわかった。

 怒るかなって思ったのに、安心感の方が先にきたらしい。

 今まで騙されていたんだから怒ったっていいのに、今だってその気配はない。
 無垢な心は時には危ういが、好ましくて、微笑ましくさえある。結愛への興味は尽きない。


 無罪放免でいいんだよね。
 もう帰ろう。

 香りの正体はわからずじまいだったけど、もういい。

 諦めよう。

 ここはわたしがいていい場所じゃない。この腕の中がどんなに心地よいと思ってしまっても、この人はわたしには手が届かない人。夢を見るようにそばにいたいと思ってしまったとしても、自分とでは住む世界が違う。

 結愛は現実に立ち返る。

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