隠れドS系御曹司は一目惚れで結ばれた彼女を溺愛して逃さない
「帰ります。すみませんでした」

 結愛は、羽琉矢の腕からもがくように身体を動かした。だが羽琉矢の腕の力は緩まない。

 ほら、やっぱり。

 逃げるだろうなってことはわかっていたからね。隙をついてすり抜けていかれたらたまらない。それでも追いかけて捕まえるけれど。探す手間が面倒だ。 

 それよりも今、結愛の心を縫いとめてしまうほうがいい。

 なぜ、離してくれないんだろう。警察の件は終わったはず。許してくれたんじゃなかったの? 
 それともまだ何か足りないんだろうか。結愛の頭が混乱する。もう、帰りたい。帰らせて。

「あの、もう二度としませんから、離してください。お願いします」

 許しを請う結愛の声を耳元で聞きながら、口の端をあげて羽琉矢は人の悪い笑みを浮かべる。


「お願い、聞いてくれるって言ったよね?」

 身をかがめ耳元で囁いた。

 艶を含んだ甘い声に結愛の全身に電流が走った。

 この感覚を何と呼ぶのか分からない。

 怖い。

 本能が告げる。逃げた方がいい。今ならまだ間に合う。だが、抱きしめられた身体は身動きが取れない。


「お願い、聞いてくれるでしょ? 約束、したよね?」

 じわじわと全身へと毒を染み渡らせるように、言葉に極上の蜜を塗ってもう一度囁いた。


 籠の中の鳥。

 とうぶん、離してくれそうにない。

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