隠れドS系御曹司は一目惚れで結ばれた彼女を溺愛して逃さない
 言葉には霊力が宿る。

 言霊って聞いたことがあるけれど、これがそうなのかもしれない。この人の言葉には従わせる何かがある。そう思うのはわたしだけなのだろうか。

 逆らえない。
 わたしは確かに約束した。

「はい」

 結愛が返事をすると、

「よかった。忘れていたら、どうしようかと思っちゃった」

 無邪気な声が降ってきた。
 結愛はずっと抱きしめられていて、羽琉矢の表情まで見えない。声だけを聞けばまだ少年のようだった。

 お願いって、何をお願いされるんだろう? 

 安易に約束するべきじゃなかった。

 今頃、後悔しても遅い。最後だと言われた言葉に惑わされて、返事をしてしまったのは結愛だ。

 けれど警察を盾に、分かっていて退路を断つような真似をしたのは羽琉矢だ。

 恨みごとの一つも言いたいが、不法侵入してしまったのは結愛自身。警察を呼ばれないだけましだと思うしかない。

 羽琉矢に頭と腰を押さえられ、拘束されていては逃げ出すことも叶わない。
 普通の人間なのに、どこにでもいる普通の女の子なのに。  
 
 用事が済んだのなら、さっさと屋敷から追い出せばいいのに。執着される理由が分からない。

 それとも、からかって遊んでいるの? 
 だとしたら、悲しい。

 羽琉矢の腕を振り解く力がない自分が悔しい。 

 どうかお願いが無茶な要求でありませんように、祈るしかない。


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