隠れドS系御曹司は一目惚れで結ばれた彼女を溺愛して逃さない
 結愛は急な動きにびっくりして、フワッと浮いた体が心許なくて、きゃっと短い悲鳴をあげて羽琉矢にしがみついた。

 それから、自分の大胆な行動に慌てて、

「ごめんなさい。自分で歩けますから、下ろしてください」

 顔を真っ赤にして、何とか止めてもらおうと、もがいてみた。だが、羽琉矢はびくとも動かない。
 お姫様抱っこをされてしまった結愛は、羽琉矢をまともに見られない。

「下ろしても歩けないでしょ? とりあえず、動けるようになるまで部屋で休んでいったら?」

 羽琉矢はすたすたと屋敷の方へと歩いていく。

 玄関をくぐる前で立ち止まると桃の木を振り返った。しばらく見つめたあと、結愛へと視線を移し、それから家の中へ入っていった。


 一体、何が起きたの? 

 あまりにも突然な出来事に結愛は茫然自失。事態をうまく呑み込めない。
 なんでこんな時に腰が抜けちゃったの? 

 帰りたかったのに、帰れるはずだったのに。なぜこんなことになったのだろう。訳がわからない。 

 混乱する結愛にわかるのは、まだここから出られない、ということだけだった。



 籠の中の鳥。

 いつになったら帰れるのだろう?

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