隠れドS系御曹司は一目惚れで結ばれた彼女を溺愛して逃さない
「あっ!」

「うああ!」

 目の前には羽琉矢がいる。彼も巻き込んで押し倒すように床へと倒れ込んだ。

 握っていた桃がころりと床に転がった。

「痛っ……」

 咄嗟に体に力を入れたから思ったほどの衝撃はなかったが、ゴンと鈍い音がして後頭部を床にぶつけてしまった。
   
 肝心の結愛は抱き留めから大丈夫だったはずだ。羽琉矢は結愛の下敷きになっていた。
 結愛の顔が首筋にあって、微かに唇がふれたような……気もする。

 ふわっと甘い桃の匂いが香る。

 羽琉矢は体の力を抜いた。

 耳元で聞こえる息遣いさえも心地いい。初めて会った彼女にどれだけ惹かれているのだろう。
 泰雅との会話を思い出した。出会いなんてどんなところに隠れているのか分からない。

 両手を結愛の背中に添えて、自分の身にのせたままじっとしていた。

「うっ……」

 わたし何をやっているの? 

 本当に転ぶなんて。うつぶせに倒れている自分が恥ずかしい。

 でも、うん? なんかちょっと違う? 

 えっと、倒れて、床に……フローリングにしては柔らかいし、温かい。

 そう、正面には羽琉矢さんが……羽琉矢さんがいて……


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