隠れドS系御曹司は一目惚れで結ばれた彼女を溺愛して逃さない
 結愛ってホントいじりがいがある。もっといじめたくなってしまう。ただでさえSだと自覚があるのに、結愛のせいでS度があがったりしたら……うーん、どうしようか。羽琉矢は心の中で不埒なことを考える。

 下を向いて顔を上げられない結愛を見つめて、ハラリとほどけた髪に手を伸ばした。結愛がそれに気づいて顔を上げる。

 頬にかかった髪をそっと梳いて耳にかけてあげた。

 羽琉矢の指が微かに頬に触れる。耳に触れる。瞳が、唇が、息遣いさえも……目の前にあって。

 羽琉矢の思いもかけない行動に虚をつかれて、結愛は言葉が出ない。
 彼に髪を触られるのは嫌ではなかった。そのゆったりとした何気ない仕草には艶があって、とても色っぽくて……ドキドキする。

 心なしか顔が火照ってきたような……

 目が離せない。

「それに、お願いも中途半端で終わってないから、ね?」

 羽琉矢にボーと見惚れていた結愛は彼の声に引き戻される。確認するように顔を覗き込まれた。
 現実に戻るように何度か瞬きをして、今の羽琉矢の言葉を心の中で反芻した。

 お願い? 中途半端? そんなはずはない。

「えっ? 食べましたよ、ね?」

 結愛も羽琉矢に確認するように首を傾げてみせた。

 ちゃんと食べた。

 結愛の中ではお願いは果たされたことになっている。

「一口齧っただけを食べたとは言わない。全部食べていってね」

 羽琉矢の中では、そうではなかったらしい。

 いつの間にか、桃は彼の手の中にあった。

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