隠れドS系御曹司は一目惚れで結ばれた彼女を溺愛して逃さない
 まだ終わってなかったんだ。すっかり忘れていた。

 まさか、全部丸かじりしなきゃいけないの? 

 それはイヤだった。一口でも齧ったんだから食べたことにはならないの? すごく美味しかったから食べたいのはやまやまだけど、でも、丸かじりだけは絶対にイヤ。女の子としては守りたい一線だった。

 結愛は目で訴える。

 彼女の顔を見つめていた羽琉矢は困ったように、ポリポリと頬を掻いた。

 仕方ないなあ。今日のところは僕が譲歩してあげる。

「大丈夫。今度は丸かじりしなくていいから、僕が切ってきてあげるよ」

 丸かじりはよほど嫌なんだろう。

 結愛は涙目になっていた。齧る姿もかわいかったんだけどな、残念。
 そうだよね。これからのためにも、結愛の気持ちもたまには尊重してあげないとね。

「だから結愛。もうちょっとだけ、つきあって?」

 結愛は何も言えなかった。ただこくりと頷くだけだ。

 羽琉矢は首肯したのを見届けると、リビングを出ていった。


 一人になった結愛は天井を仰ぎながらソファに深く沈み込む。

 もうちょっとだけ、つきあって……

 羽琉矢の言葉が胸をついた。

 こんなに落ち込むとは思わなかった。
 どれほど心を奪われているのだろう。本当に忘れられるのだろうか。


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