隠れドS系御曹司は一目惚れで結ばれた彼女を溺愛して逃さない

告白の行方

「えっと……これはどうなんだろう。結愛に出してもいいものなのかな?」

 キッチンで桃を切った羽琉矢は、皿に盛られたものを途方に暮れたように見ていた。
 削ぎ切りにされた桃は、触り過ぎて所々色が変わっている。
 皮はすんなりと剥けた。問題は果肉。

 簡単に切ることができると思ったのだが、包丁を入れてみると、真ん中で大きな顔をして鎮座していた種が邪魔をした。だから、種に沿って切ることしかできなかったのだ。

 理想はくし形に切った桃。だが現実は、大きさもまちまちの歪な形の桃だった。

「やっぱり、丸かじりしてもらった方がよかったかな」

 理想と現実の違いに羽琉矢はちょっと後悔する。

 一人暮らしをするようになってから、包丁を持つようになった。

 新しい家に慣れるまでは他人を入れたくなかったため、何でも一人でしなくてはならず、必要に迫られたからだ。掃除、洗濯もこの時に覚えた。

 料理好きな泰雅に基本的なものを教えてもらって、卵焼きや目玉焼き、肉じゃが、カレー、味噌汁に焼き魚など、簡単な朝食程度のものなら作れるようになったのだ。

 果物だって、見目良く、くし形に切ることが出来る。

 泰雅に包丁使いの基本と言われて、林檎を段ボール一箱分の皮むきとカットまでさせられた。

 知り合いから送られてきたものだったらしく、その使い道に体よく使われたのだ。

 泰雅は羽琉矢が切った林檎で、ジャムやケーキやパイなどのお菓子を山ほど作っていた。


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