隠れドS系御曹司は一目惚れで結ばれた彼女を溺愛して逃さない
 結愛の訪れを待っていたかのように、色づき始めた桃の実。

 一族の者ではなく彼女だけに反応する香りと味。
 桃の木は結愛のために花開き実をつけたのかもしれない。現に羽琉矢には桃の美味しさがわからないのだから、この桃は結愛のものなのだ。

 偶然では片付けられない二人の出会い。

 一族繁栄の象徴の桃の木、何十年ぶりかの桃の実が齎したのは、伴侶だったのかもしれない。羽琉矢のために結愛を選んでくれたのが桃の意志ならば、その通り叶っている。

 既に手離せなくなっているのだから、あとは彼女の心を自分のものにするだけ。

 ゆっくりと……ゆっくりでいい。時間はたっぷりとある。



 そういえば、結愛は立ち上がることができただろうか。

 今日はこれで帰すけど、明日からはどうしようかな? やすやすと彼女が手に入るとは思っていない。
 手を替え品を替え、一番効果的なのは何だろう? 

 結愛を手に入れるその過程さえも羽琉矢にとっては、楽しくて幸せな時間なのだ。

 明日からのために色々と考えを巡らせていると、こんもりと盛られた桃が目に入った。
 果物は鮮度が落ちやすい。早く食べないと色が変わってしまう。まずはこれを片付けなければ。

「このまま食べさせるのは、さすがにまずいよね。そうだ、形を変えてしまえば……確かあれ、あったよね?」

 羽琉矢は思い立つと、鼻歌交じりに棚の中を探し始めた。

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