隠れドS系御曹司は一目惚れで結ばれた彼女を溺愛して逃さない
 羽琉矢が部屋を出ていってから、人心地つくと結愛は部屋を眺めていた。

 二十畳ほどの広さのリビングには、大型テレビと結愛が座っているソファ、サイドテーブルと隅に細長い間接照明が一つ置いてあるだけの、ガランとした部屋だった。
 モデルルームの方がまだ血が通っているような感じがする。

 物がなさ過ぎて生活感がない無機質な空間は、人を拒んでいるような気がしてどこか寒々しい。

 いつもどんな生活を送っているんだろう。好奇心にかられている所へ羽琉矢が入ってきた。 

「おまたせ」

 着物姿の出で立ちは同じ年頃の男子達とは違う。
 結愛が押し倒したせいで、着崩れていた着物もきちんと整えられていた。

 歩く姿も楚々として、すっと伸びた背筋が凛とした雰囲気を醸し出している。顔立ちが整っているとなおのこと、着物姿が粋に見えてかっこいい。
 結愛は羽琉矢の動きを目で追っていた。視線が外せなかったのだ。

 手には小さなトレイを持って、結愛のそばまで来ると、ソファの横のサイドテーブルを彼女の前へと引き出して、その上にコップを置いた。

「さっきの桃だよ。スムージーにしてみた。冷たくて飲みやすいと思うよ」

 羽琉矢が探していたものはミキサーだった。

 どんなに取り繕っても桃の形は変わらないのだから、いっその事、形そのものを失くしてしまえばいいと思ったのだ。

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