隠れドS系御曹司は一目惚れで結ばれた彼女を溺愛して逃さない
「僕の手を支えにして立ってみて?」

 羽琉矢に促されると、おずおずと手を伸ばして彼の手にのせた。

「結愛の手は温かいね」

 自分の体温より高く感じる結愛の手を引き上げるようにして、彼女を立たせる。それほど力を必要とせずに結愛は立ち上がった。今度こそ大丈夫みたいだった。

 これで家に帰してあげられる。

 体が回復して喜んであげなければいけないのに。

 もうちょっとだけ、時間を引き延ばして……もうちょっとだけ、とぐずぐずといつまでも往生際の悪い自分がいた。  

 だが、それを結愛には気取られたくなかった。

 やっと、立てた。よかった。これで羽琉矢さんに心配かけなくてすむ。ほっとして、見上げた先の彼の愛しむような眼差しが、結愛の心をまっすぐに射た。

 一瞬、時間が止まる。

 どくん。心臓の鼓動が大きく鳴って立ち竦む。

 わたしはどうしてしまったのだろう? 何度、この人の瞳に囚われたら気がすむのだろう。

 今まで告白されたことは何回かあったけれど、誰とも付き合う気になれなかった。

 それなのに……羽琉矢さんだけは違う。

 見つめられるだけでこんなにも胸が高鳴る。
 もっと、抱きしめられていたいって、触れていたいって思う。この手さえも離したくないって、まるで乾いた大地が雨の恵みを待ち焦がれるように、彼を求めてしまう。
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