隠れドS系御曹司は一目惚れで結ばれた彼女を溺愛して逃さない
 どうしたらいいの? 

 初めて抱く気持ちに整理をつけられないまま……彼の声がした。

「よかったね。これでいつでも家に帰れるよ」

 羽琉矢は結愛の頭をなでた。

「はい。お世話をかけてしまって、すみませんでした」

 帰れる。

 羽琉矢の言葉に喜ばなければいけないのに、心は浮き立ってこない。それでも笑わなければ。精一杯、笑顔をはりつけた。

「結愛。座って」

 促されるままソファに座った。
 羽琉矢も腰かけるとソファが彼の重みで沈む。隣で羽琉矢の存在を感じても、結愛は顔を上げられなかった。

「桃のスムージー飲んでみる?」

 お願いはまだ果たしていない。

 トレイに目をやれば、コップの隣におしぼりとストローが添えられている。

 見るからに御曹司といった感じなのに、こんな気配りもできる人なんだ。
 時間が経つほどに色んな羽琉矢が見えてきて、嬉しいと思う反面深入りを懸念する自分がいる。
 知りたい気持ちと知りたくない気持ちがごちゃ混ぜになって、結愛自身どうしたらいいのか分からない。

 コースターにのせられたコップは、露をうって水滴が出来ている。

 早く飲んでしまった方がいいのだろうが、今は喉を通りそうにない。
 
「ごめんなさい。もうちょっと、してからで……いいですか?」

 正直な気持ちとはいえ、言った後で結愛はちょっと後悔してしまった。
 せっかく作ってきたものを蔑ろにされたと、怒らないだろうか?

 羽琉矢にとっては願ってもない提案だった。

 桃がなくなってしまえば引き留める理由がない。
 次の約束はするつもりだが、今はまだ結愛と一緒にいたい。もうちょっと、彼女の言葉に救われて、自然と頬が緩んだ。


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