隠れドS系御曹司は一目惚れで結ばれた彼女を溺愛して逃さない
 ああ、やっぱり……

「すごいんですね」

 結愛は横に座っている羽琉矢を半ば放心状態で見つめた。

「まだ、引き継いだわけではないし、今は一介の代表ってだけだよ」

 一介って、いくつかの会社の代表ってだけでもすごいのに。今はそうだとしても、将来はグループの頂点に立つ人。

 そのくらいたいしたことではないというように、にこりと微笑む羽琉矢を見て、キリッと心が痛む。膝の上で手を握りしめた。

 やっぱり……

 ……手が届かない人。

『普通が一番よね。平凡な生活が一番よ。ね、結愛。高望みなんてしなくていいのよ。つきあう人は平凡でいいの、普通でいいの。あなたを大事にしてくれて、心から愛してくれる人が一番よ。もう一つ付け加えるならば、うちにお婿に入ってくれる人。それが理想ね』

 母親の口癖。耳にタコができるくらいに、いつも聞かされてきた。

 普通で平凡。
 自分の家庭がそうだから、それでいいと思っていた。自分と釣り合う人とつきあう。それが両親の希望。わたしだって思っていた。背伸びをしない恋愛しようと。

 でも羽琉矢さんは違う。普通でも、平凡でもない。
 その背中にはたくさんの責任を背負っていて、けれどそれさえも自分に与えられた使命だと、堂々と立っている人なのだろう。

 わたしの理想とは正反対の人。

 それはわかっていたことだから、最初からわかっていたこと……わかっていた……だから、何も悲しむことはない……のに。

 結愛は肩で大きく息をすると目を伏せた。


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