隠れドS系御曹司は一目惚れで結ばれた彼女を溺愛して逃さない
「違い…ます。ごめん…な、さい。そう、ではなくて……ごめんなさい」

 結愛は消え入るような声で、途切れ途切れに言うのがやっとだった。

 分からない。何が結愛をそんなに落ち込ませているのか。  
 分からない。笑顔が消えてしまうほどのことだったのだろうか。
 肩書を聞いても目の色を変えなかったのは、結愛が初めてかもしれない。そこには好感が持てるが、距離を置いてもらいたいわけではない。羽琉矢は結愛に近づきたいのだから。

「僕は謝ってほしいわけではないんだけどね」

 要領を掴めない結愛に、惑ったように羽琉矢は肩を落とした。

 分かっている、ごめんなさいっていう言葉が相応しくないことくらい、分かっている。

 でも、他に言葉が見つからない。

 初めから覚悟はしていたのに、彼の素性を聞かされて、こんなにショックを受けるとは思わなかった。思っていた以上に結愛の心の中に入り込んでいたみたいだった。自分の心はごまかせない。

 恋をした。

 彼に初めて会ったあの時に、すでに想いは始まっていたのかもしれない。
 抱きしめられて安心するのも、見つめられる瞳に囚われるのも、恋をしているから。
 けれど、自分の気持ちを打ち明けるわけにはいかない。告白しても迷惑なだけ。

 結婚はしていないとは思うけれど、恋人がいるかもしれない。婚約者がいたって不思議じゃない。むしろそのほうが自然だ。

 さまざまな考えが頭の中で渦巻いて、うまく気持ちを整理できない。

 
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