隠れドS系御曹司は一目惚れで結ばれた彼女を溺愛して逃さない
 恋を自覚しても叶うことのない想いは苦しいだけ。

 どうしよう。どうすれば、楽になれるんだろう。

 焦りを宿した視線を彷徨わせたその先に、桃のスムージーが映った。
 まだ口もつけていない。これを飲んでしまえば全てが終わる。

 帰ろう。

 結愛は目の前のコップを手に取った。

「羽琉矢さん、これ、いただきますね」

 手にしたコップを少し上に掲げてから微笑むと、ストローをさして口にした。ざらりとした感触が喉を通っていく。

「凄く甘い。さっきよりも甘くなったみたい」

 丸ごとの桃を食べた時よりも、もっと味が濃厚になっているような気がする。時間が経つにつれ、劣化はしても、より良く味が変わるなんてあり得ないことかもしれない。だが、結愛はそう感じてしまった。

 馥郁とした甘い香りが食欲をそそる。甘美な味わいが体内の隅々まで行き渡り、とろりとした糖蜜が、身体の奥深くまで染み込んでいくようだった。

 強張っていた心がほぐれて軽くなったような気がする。

「へえっ。そうなの? 桃100%で他に何も入れてないんだけどな。氷が入っているから味も薄くなったと思っていたんだけど、美味しい?」

 幾分か気持ちが浮上したらしい結愛の表情にほっとしながら、羽琉矢が聞いた。

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