隠れドS系御曹司は一目惚れで結ばれた彼女を溺愛して逃さない
「すみません。いつまでも長居をしてしまって、帰りますね。ありがとうございました」

 何か言いたそうな彼に気付かないふりをして、一気にしゃべるとぺこりと頭を下げた。

 終わった。

 結愛はソファから立ち上がろうと腰を浮かせかけた時、

「結愛、待って」

 その言葉と共に手を握られた。と気付いたときには、目の前に羽琉矢がいた。膝立ちで結愛と視線を合わせた真剣な眼差しに、行く手を阻まれて動けなくなってしまった。

「もう、お願いは果たしました。だから」

 引き留めないで、お願いだから。

 結愛は泣きたくなる気持ちを抑えて心の中で叫ぶ。

「うん。わかってる。帰る前に一つだけ約束して?」

「約束?」

 まだ、何かあるの?

「また、会いに来て。明日でも、明後日でも、近いうちに必ず会いに来て、待っているから」

 思いつめた羽琉矢の声に表情に茫然とする。

 そんな……もう二度と会うつもりなどないのに。

 逃げると思った。

 そう思ってしまったら考えるより先に言葉が飛び出していた。

 手を替え品を替えって、ゆっくりって、何故悠長なことを思っていられたのだろう? 

 結愛を前にすると余裕なんてなくなる。ずっと帰りたがっていた。

 綴木の家名さえこの娘には効力はなくて、ましてや僕になんて興味はないのかもしれない。
 だからといってこのまま帰してしまったら、きっと二度と会えないだろう。

 逸る気持ちのまま口にしてしまった。


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