隠れドS系御曹司は一目惚れで結ばれた彼女を溺愛して逃さない
 羽琉矢はソファの上で、怯えるように震えている結愛に手を伸ばした。

 何度も抱きしめているから、黒いゴムでくくっただけの髪はほつれてくしゃくしゃになっている。

 視界が翳ったと結愛が気づいたときには、羽琉矢の襟元が目にいっぱい映った。

 一体何を? 

 考える間もなく、止める間もなかった。蒼ざめて震えていたはずなのに、羽琉矢の突拍子もない行動にそれさえも忘れてしまっていた。

 彼の手は後頭部でまとめていた髪を弄っている。手先がごそごそと動かされるたびに、着物の袖が頬に触れてくすぐったい。

 結愛は忍び笑いが漏れそうになる声をこらえて、されるがままになっていた。想像もつかない行動は最初からで、今更抵抗する気にはなれなかったからだ。

 それにしても、今の今まで機嫌が悪そうだったのに。水に流してくれたんだろうか? もう怒ってない? だったらいいけど……
 不安と安心が入り混じって複雑な面持ちになっていると、頭が軽くなって視界が明るくなった。

 ゴムを解くとファサッと髪が背中へと落ちた。

 背中の中程までの長い髪は今どきの娘には珍しい漆黒色。流れるように豊かに波打つ髪が、肩をすっぽりと覆い、顏の輪郭までも変えてしまう。

 あどけなさなんてどこにもない。そこはかとなく色香を放つあでやかな一人の女性がいた。


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