隠れドS系御曹司は一目惚れで結ばれた彼女を溺愛して逃さない
「?」

 またもや話題が変わる。
 結愛は自分の気持ちを把握できないまま、話についていかされる。

「さっきから甘い香りがしているの、気づかない?」

「香り……ですか?」

 結愛は息を吸い込んで香りを確かめてみる。だが何も感じない。桃があった時には香りは周りに存在していて、甘い匂いに酔うほどだったのに。

「わたしには……」 

 香りなんて今はどこにも感じない。結愛は首を左右に振った。

「そうなんだ。不思議だね、自分では感じないんだ。とても美味しそうな匂い。桃が完熟したみたいな甘ったるい濃厚で芳醇な香り。これは結愛の匂いだよ」

 確信だった。
 部屋にいる時から微かに感じていた。

 結愛を抱きしめて欲情した時に嗅いだ香りと同じ。髪からも感じた。理性を吹き飛ばしてしまいそうな扇情的な香り。

「えっ!」

 わたしの? 匂い?

 結愛が困惑している間に、羽琉矢は髪をかき上げるように後ろに流すと、耳を露わにして顔を近づけた。彼の頬が結愛の頬に触れる。

 息遣いが耳元で聞こえて……耳をくすぐる羽琉矢の熱い息に肌が粟立った。

「あっ……んっ」

 甘い吐息のような掠れた声が漏れて、身を捩るように肩を竦めた。その瞬間、電流のようなぴりっとした感覚が脳天を貫いた。その感覚に耐えられなくてギュッと目を瞑る。

 敏感に反応する結愛に満足げな顔をすると、肩を抱いて耳に触れそうなくらいに唇を近づけた。

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