隠れドS系御曹司は一目惚れで結ばれた彼女を溺愛して逃さない
「まるで……わたしを食べて……って、言っているみたいだよ」

 溜息にも似た蜂蜜をたっぷりとかけたような甘い声で囁かれて、耳の奥が頭の中が熱く痺れて、何も考えられなくなりそうだった。

 そんな……そんなこと思ってもいない。

 結愛は残っている理性でふるふると全身で否定した。

 自分では自覚はないのだろう。

 纏わりつくように甘美な香りが立ち上る。

「ほら、また香りが強くなった。僕を誘っているの?」

 追い打ちをかけるような蠱惑的な羽琉矢の声に、一気に身体が熱くなった。

 やめて、怖い。誘ってない。誘ってないのに。

 奥から突き上げてくるような甘やかな熱が体中を支配する。

 これ以上は……ダメ! 

 今まで知らなかった感情を呼び覚まされそうで怖い。未知の感覚に戦慄する。

 耳元から顔を離した羽琉矢は艶然と微笑んでいた。獲物を狙う獣のような瞳は、どこまでも自分を追ってきそうで、捕まったら最後。

 危険を孕んだ彼から一刻も早く逃れたくて、

「帰りたい」

 独り言のように呟いた微かな声は、羽琉矢の耳に届いた。

「帰りたいの?」

 結愛は彼の顔を見れないまま頷くと、

「いいよ。帰っても」

 羽琉矢の静かな声がした。

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