隠れドS系御曹司は一目惚れで結ばれた彼女を溺愛して逃さない
 一番の後悔を蒸し返される。

 いたたまれない。どれだけこの人を傷つけたんだろう。
 
 突き放すような言葉を浴びせられて、ズキズキと痛む心は癒されないまま、刺さった棘は増えていく。

 これは罰なのだろうか。心にもない嘘をついたせいで、こんなにも責められる。

 違う。違うの。嫌いなんかじゃない。嫌いじゃない。ホントは好き。好きなの。

 言いたくても言えない、届くはずのない叫びは喉の奥に消える。

 こんな気持ちを抱えて別れるの? 

 本当に忘れられるの?

 覚悟を決めたはずなのに、儚く、心の中はぐらぐらと揺れ始める。

「結愛は忘れても、僕は忘れないよ。絶対に忘れない。こんなに好きになったのは結愛だけ。これからもずっと結愛だけが好きだから」

「そんな……いや」

 羽琉矢の熱い瞳、握られた手が熱い。これ以上わたしの心を乱さないで。

「忘れて。お願いだから、わたしのことは忘れて。羽琉矢さん、お願い」

 結愛は腕に縋りついた。

 羽琉矢の気持ちが重い。重すぎて、このままでは心の奥の隅々まで、彼の情愛に埋めつくされてしまう。

「どうして? 僕の想いは僕だけのものだよ。たとえ結愛でも人の心まで指図する権利はないよ」

 断言して淡々と話す羽琉矢。凪いだ海のような静かな表情には、どこか危うさが見え隠れする。

「いや、いや、いや。忘れて、お願いだから、忘れて、そうでないと、わたし……」

 頭を大きく振りながらさらに羽琉矢にしがみつく。

 長い髪がふわふわと左右に靡く。その度に甘い香りが羽琉矢の五感を刺激する。

「これは僕だけの気持ちだから、結愛が気にする必要はないよ」

 顔色一つ変えることなく、笑みさえ浮かべて堂々と言い切る羽琉矢の態度に、言い知れぬ不安が募っていく。

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