隠れドS系御曹司は一目惚れで結ばれた彼女を溺愛して逃さない

溺れる果実

 桃の甘い香りが二人を包む。

 羽琉矢はついばむように軽く触れていた唇を離して、結愛を見つめた。
 あっと微かに漏れた声と共に、驚いたように見開かれた瞳の中に自分の姿を見つけて、羽琉矢はふわりと微笑む。
 睫毛が涙に濡れて光る。ゆっくりと瞬きした瞬間、睫毛に溜まった滴が頬に零れ落ちた。

 羽琉矢は目のふちに残る涙を唇で啜ると、結愛の肩がぴくと小さく揺れる。ほんの微かな反応が嬉しくて。頬の涙の跡を指で拭うと頬を赤く染めた彼女がいた。

「羽琉……矢……さん?」

 恥ずかしそうに少し怯えを滲ませて、じっと見つめる結愛が、小さな雛鳥のようでひどく心許なくて、庇護欲をそそる。

「ごめん……」

 ギリギリのところで抑えていた欲望は、想いが通じ合った悦びに溢れ出すばかり。羽琉矢はもう一度口づけた。重なった唇は甘くて従順で触れるほどにもっと欲しくなる。

 柔らかな唇の感触が結愛の唇に伝わる。

 しっかりと重ねられた唇は少し冷たくて、それが羽琉矢の存在を感じさせて、胸がドキドキと高鳴った。初めてなのに、与えられるキスは気持ちよくて抗えなくて、羽琉矢に唇を委ねていた。

 何度も角度を変えて重なる唇に熱い吐息が漏れる。
 その度に羽琉矢の熱い視線が降ってくる。キスの合間に「結愛」と蜜を含んだ愛しげな声で名前を呼ばれると、体の芯がじんわりと熱くなる。羽琉矢の声が媚薬のように心の奥深くに染み込んでいく。

 熱い。

 心が体が震える。

 額に、瞼に、頬にも軽く口づけを降らしながら、二人の体が傾いでいく。 
 結愛の体がソファに沈み込むと、ファサと広がった波打つ髪が妖艶で扇情さを煽る。キスだけでは満足出来ない。このまま、自分のものにしたくてたまらない。

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