隠れドS系御曹司は一目惚れで結ばれた彼女を溺愛して逃さない
「帰らないと……」

 逃げ出すことしか思い浮かばなかった。

 身体の奥の熱に朧げに気付いていても、自分の中に隠された扉を開けてしまうのは怖かった。

 まだ両思いになれた喜びに浸っていたくて。軽く触れ合うキスだけでも充分に刺激的で、こんな風に思うのも、まだ何も知らない子供だからかもしれない。

「うん。帰っていいよ」

 軽やかな返事が返ってきた。信じられないような顏で羽琉矢を見つめた後、帰れると理解した途端、結愛の表情が明るくなった。それじゃあと身を起こそうとした時、

「なんて、言うと思った?」

 悪戯っぽい笑顔で笑われた。

 結愛はぽかんと口を開けて羽琉矢を見つめるしかなかった。

 くすくすと愉快そうに笑う彼は、いたずらっ子のようで、人の反応を見て面白がっているみたいだった。

 こっちは真剣に考えているのに……からかわれたと思ったら、結愛はカァと頭に血が上った。

「羽琉矢さんのいじわる。帰ります」

 目の前の羽琉矢を突き飛ばすように無理やりに払いのけて、身を起こし立ち上がった。と思ったら、腰を捕まえられてぐいと強引に座らせられた。そこはソファの上ではなく、羽琉矢の膝の上だった。

 思いもしなかった体勢に顔が火照る。息遣いさえも聞こえてきそうな間近に羽琉矢の顔がある。恥ずかしい。

 簡単には帰してくれない。

 同じようなパターンで何度も足止めされている。

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