エリート社長の密かな純愛〜身籠り初夜から始まる極上な甘い罠〜
───けれど、触れ合う寸前で、リビングのローテーブルから無機質なバイブレーション音が鳴り響いた。
スマートフォンの震動音が、室内の甘い空気を一瞬で切り裂く。
「……チッ」
───すぐ目の前で、彼が低く舌打ちをするのが聞こえた。
頬に添えられていた手の温もりが名残惜しそうに離れていき、それにつられて私も弾かれたように目を開ける。
彼は酷く苦々しい表情でスマートフォンを手に取ると、画面に表示された名前を見て、さらに深く眉をひそめた。
───仕事の連絡なのだろう。
一瞬で、いつもの鋭く冷徹な『社長』の顔へと戻っていく。
「悪い、少し外す」
「あ、はい……っ」
彼がベランダへと向かう後ろ姿を見送りながら、私は自分の胸に手を当てた。
───心臓が、耳の奥でまだドクドクと不快なほど大きな音を立てている。
(……助かった、んだよね?)
からかわれていただけとはいえ、あのままキスなんてされていたら、私の心臓は本当に止まっていたかもしれない。
ピンチを救ってくれた電話に、感謝すべきなのに。
……それなのに、冷えていく唇に触れながら、胸の奥がキュッと萎むように痛んだ。