エリート社長の密かな純愛〜身籠り初夜から始まる極上な甘い罠〜
さっきまでの、あの甘く優しい微笑み。
壊れやすいものに触れるような、愛おしそうな眼差し。
……あれは、彼にとってはただの『気まぐれ』で、彼の本当の日常にいるのは、あんな風に当たり前のように彼と繋がれる、私の知らない女性なのだ。
さっき電話が鳴ったときに感じた「寂しさ」の正体が、さらに分からなくなる。
ただホッとしただけのはずなのに。
(───彼が私の知らない女性の名前を優しく呼んだだけで、どうしてこんなにも、息がうまくできなくなるほど胸が苦しいんだろう。)
「じゃあ、明日な」
そして───その言葉が、私の耳の奥で嫌な音を立てて弾けた。
(明日、も会うんだ……)
仕事の用事なら、わざわざこんな夜遅くに連絡して、あんなに柔らかい声で「明日な」なんて言わない。
しかも明日は金曜日、彗さんは社長としての仕事があるはずだ。
───わざわざ仕事をサボってまで、あの電話の女性に会いに行くのだろうか。
ベランダの扉を開けて室内に戻ってきた彼は、スマートフォンをポケットに仕舞いながら、私を見て少しだけ目元を和らげた。
「待たせたな。……どうした、そんな顔して」
私の視線や、強張った空気を敏感に察知したのだろう。
彼の端正な眉が、不審そうにピクリと跳ね上がる。
すべてを見透かすような社長の瞳が、じっと私の顔を覗き込んできた。