エリート社長の密かな純愛 〜身籠り初夜から始まる極上な甘い罠〜
今までの私なら、こんな贅沢な期待なんて絶対にしなかった。
傷つくのが怖くて、最初から「ただの部下」「義務的な関係」という安全な枠から一歩も出ようとしなかったはずだ。
それなのに、彗さんが私にだけ見せる特別な表情や、頭やお腹を撫でてくれる大きな手のひらの温もりに触れるたび、私の心は簡単にほどけていった。
───いつの間にか、彗さんにとって大切なのは私だけなんだって、都合のいい勘違いをしてしまうくらいに。
……だけど、それは私の思い上がりでしかなかったんだ。
別の女性に向けられた、私へ向けられているものと全く同じ、優しくて甘い声。
それを聞いてしまった瞬間、胸の奥が、冷たい水に浸されたみたいにすうっと冷えていくのが分かった。
ああ、そうか。
───私は彗さんの「唯一」でも何でもなかったんだ。
(私、強欲になっちゃったんだな……)
……ただ傍にいられるだけで幸せだったはずなのに。
今では、彗さんのすべてを独り占めしたいなんて、そんな傲慢なことを願っている。
激しい痛みを通り越して、頭のどこかがひどく冷静だった。
ざわついていた胸の奥に、重い何かがストン、と音を立てて落ちていく。
(───ああ、私、彗さんのことが好きなんだな。)
自分の手には到底負えない、あまりにも大きくて切ない恋心を、私は初めて静かに自覚した。