エリート社長の密かな純愛 〜身籠り初夜から始まる極上な甘い罠〜
溢れ出した涙は、手の甲にポツポツと冷たい染みを作っていく。
───彗さんを好きになればなるほど、この胸の痛みは増していくのに、どうしても嫌いになることなんてできなかった。
(ごめんね。ママ、あなたのパパのことが、本当に大好きなんだよ……)
まだ小さくて、形もわからないお腹の命に、心の中でそっと謝る。
だけど、彼の優しさに甘えて、これ以上この場所に居座り続けるわけにはいかない。
彼の完璧な人生を、私の存在で、このお腹の子の存在で、めちゃくちゃにしてしまうわけにはいかないのだ。
──彼を、本来あるべき場所へ返してあげよう。
あの、綺麗で眩しい婚約者のもとへ。
私は小さく息を吐き出し、泣き崩れそうな心を必死で奮い立たせた。
明日、会社に行ったら退職願を出そう。
彼に黙って、この街からも、彼の視界からも、全部消えてしまおう。
それが、私が彼にしてあげられる、最初で最後の”妻”としての役目のような気がした。