エリート社長の密かな純愛 〜身籠り初夜から始まる極上な甘い罠〜
署名捺印を済ませ、すっかり冷たくなってしまった紙を両手でそっと抱きしめるように持つ。
そして、重い足取りで彼の書斎へと向かった。
深夜の静寂が広がる廊下を進み、彼の部屋のドアの前に立つ。
彼が帰ってきたとき、一番に目に入る場所に、この決意を置いておこうと思ったのだ。
「し、失礼します……」
小さく声をかけてノブを回すと、カチャリと静かな音が響いた。
カーテンの隙間から差し込む街灯の光だけが、主のいない部屋を薄暗く照らしている。
一歩足を踏み入れると、いつも私の心をひどく狂わせる、彼のビターで落ち着いた香水の匂いがふわりと鼻腔をくすぐった。
それだけで、また涙が溢れそうになるのを必死で堪える。
───もうここに来ることも、彼の香りに包まれることもない。
(ああ、本当にこれで最後なんだな……。)
愛おしさと切なさに胸を締め付けられながら、私はそっと彼のデスクへと近づいた。
その冷たい木目の机の上に、離婚届を置こうとした、そのとき。
私の目に、あるものが飛び込んできた。
「え……? これって……」
室内のわずかな光に照らされていたのは、こんなところにあるはずのない、あまりにも見覚えのある"とあるもの"だった。
それを見た瞬間、心臓がドクンと大きく跳ね上がり、私はその場に縫い付けられたように動けなくなってしまった。