エリート社長の密かな純愛 〜身籠り初夜から始まる極上な甘い罠〜



「なんでって……大切なものをとっておくのは、当たり前のことだろう?」


低く、少しだけ甘さを孕んだ彼の声が、静寂に溶けていく。



「たい、せつ……?」


掠れた声が、やっとの思いで口から漏れた。


脳裏をよぎる記憶と、目の前の彼が重なりそうになって、胸が苦しくなる。




「……まだ、わからないのか?」


覗き込んでくる慧さんの漆黒の瞳に、激しく動揺する私が映っている。


「え……」

「俺が、『けーくん』だ。───『ひな』」


記憶の奥底にある大好きな声が、今の彼の声と、完全に重なって。


───その名前が呼ばれた瞬間、世界が止まった気がした。




「……引越してからも、ずっとずっと、お前を探してた」

頭の芯が、じんと熱くなる。


(ウソ……)


呆然と立ち尽くす私の頬に、慧さんの大きな手がそっと触れる。



いつもの”完全無欠なエリート社長”の顔ではなく、どこか泣き出しそうな、熱のこもった目。




「だから、会社でお前を見つけた時……本当に、運命だと思った」


低く、熱を帯びた声が鼓膜を揺らす。



「───っ」


次の瞬間、強い力で引き寄せられ、視界が慧さんの胸元で真っ暗になった。


壊れ物を扱うように優しいのに、どこか必死で、逃がしてくれないような強い抱擁。



背中に回された彼の手から、トクトクと速い心音がダイレクトに伝わってくる。



< 36 / 44 >

この作品をシェア

pagetop