エリート社長の密かな純愛 〜身籠り初夜から始まる極上な甘い罠〜
「もう二度と、離さない」
彼の腕の中で固まる私を、慧さんはさらに愛おしそうに強く抱きしめた。
……やがて、ゆっくりと身体が離されたかと思うと、顎を優しく上向かせられる。
驚きで大きく開いた私の視界に、すぐ近くまで迫った慧さんの綺麗な顔が映った。
触れそうなほど至近距離にある唇。
向けられる眼差しは、社内で見せるどの表情よりも熱く、男の人の色を帯びていて───。
降ってくる吐息に、心臓が爆発しそうになる。
───でも、その甘い熱が、私の頭の片隅にあった冷たい記憶を呼び覚ました。
『お互いの親同士が決めた政略結婚らしいけど、相手の方もめちゃくちゃ美人で──』
給湯室で耳にした、同僚たちの噂話。
(だめ、だって慧さんには……っ)
「───っ、だめです!」
唇が重なる、本当にあと数センチのところで、私は我を忘れて慧さんの胸を強く押し返した。
「……っ」
予期せぬ強い拒絶に、慧さんが目を見開いて動きを止める。
私の頬に添えられたままの彼の綺麗な手が、かすかに震える。
ずっと探してくれていた『けーくん』が目の前にいる。
それは信じられないくらい嬉しいのに、胸の奥がズタズタに引き裂かれそうに痛い。