これは、診察だ。

Episode5★すれ違う夜と溢れる本音

それからというもの、蓮は今まで以上に厳しく、そしてなぜか執拗に葵の面倒を見るようになった。



指導という名の「特訓」が連日続き、葵はへとへとになりながらも必死についていく。



しかし、ある日の夜勤明け。



休憩室で資料をまとめていた葵のところに、水野がやってきた。



「ねえ、橘さん。あなた、本当に分かってる? 蓮先生があのポジションでどれだけプレッシャーを背負ってるか。あなたのせいで先生の評価に傷がついたらどうするのよ」



正論だけに、葵は何も言い返せなかった。



(確かに私はまだまだ未熟で……先生の足手まといになってるかもしれない……)



自信をなくした葵は、その日、蓮の姿を避けるように足早に病院を後にした。



翌日。



葵がどこか気まずそうに目を合わせないでいると、見かねた蓮が休憩室のドアをピシャリと閉め、葵を壁際に追い詰めた。



――いわゆる、壁ドンだ。



「おい、昨日の帰り際からなんだ、その態度は」



「……っ、私、先生の邪魔になってるんじゃって……。水野先生の言う通り、私みたいな半人前が近くにいたら、先生まで変な目で見られるし……」



葵の瞳からぽろりと大粒の涙がこぼれ落ちた瞬間、蓮の表情から余裕が完全に消えた。



「……誰が、そんなこと言った」



低く、けれど震えるような声。



蓮は葵の頬にそっと手を添え、親指で涙を拭い去った。



「俺が選んで、俺が傍に置いている。誰が何と言おうと関係ない。お前が俺の隣にいることは、俺が決めたことだ。……勝手に逃げるな、あほ」



その不器用で、でもあまりにも真剣な愛の告白に、葵は息ができなくなるほど胸を打たれるのだった。
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