これは、診察だ。

Episode7★崩れる理性と熱の理由

公園から戻った翌日。



病院内はいつもの慌ただしさに包まれていたが、葵の心は昨夜の蓮の言葉でいっぱいで、ふわふわと浮き上がっていた。



しかし、季節の変わり目と蓄積した疲労が、一気に葵の体に牙をむく。



夕方、病棟の廊下を歩いていた葵の足元が突然ぐらりと揺れた。



(……うそ、また……?)



昨日の今日で、さすがに蓮には心配をかけられない。



そう思った葵は、必死に壁に手を突いて耐えようとしたが、視界が一気に暗くなり、そのまま崩れ落ちてしまった。



「――っ、おい!」



運悪く(あるいは運良く?)、通りかかった蓮が、倒れ込む葵を間一髪で受け止める。



触れた葵の体温は、信じられないほど熱かった。



「……熱、じゃねえか。一体いつから我慢してた」



青ざめる葵を抱きかかえ、蓮は自分の当直室へと一直線に向かった。



ベッドに寝かせられた葵は、高熱でうわ言のように「すみません……」と呟いている。



その小さな震える手をとって、蓮は初めて自分の無力さを噛み締めていた。



「……お前はいつもそうだ。自分のことになると、途端に無茶をする」



冷徹なエリート医師の仮面は完全に剥がれ落ち、そこにはただ、愛しい人を案じる一人の男の顔があった。
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