消防士は彼女の恋に火をつける
 連絡が来たのはその夜のこと。
 スマホを見ると、『向井涼(むかい りょう)』と表示されている。

 彼だ!
「どうしよう……」
 どきどきしながらメッセージを見る。

『今日はお急ぎのところを邪魔してしまい、本当にすみませんでした。よろしければ今度の土曜日にお茶でもおごらせてください』

 土曜日。なにも予定はなかったはず。
 私はなんども書き直してから、了承する返事を彼に送った。




 土曜日まではあっという間に過ぎて、当日。
 私ははりきっておしゃれをして家を出発した。

 公園の横を通り過ぎるとき、猫が木の枝にいるのが見えた。

 猫って本当に木に登るんだ。初めて見た!
 ちょっと得した気分でるんるんと待ち合わせの駅に向かう。

 到着したのは十分前、まだ彼は来ていないようだ。
 わかりやすいように時計塔の前に立つ。
 スマホを見て時間をつぶしていると。

「ねえねえ、ひとり?」
 声をかけられて顔をあげると、ちゃらい感じの男性が立っていた。

「待ち合わせしてるんです」
「そんなのすっぽかしてさあ、俺と遊ばない?」

「お断りします」
「いいじゃん、君って俺のタイプでさあ」

 私は唖然として彼を見た。こんな失礼すぎるナンパは初めてだ。たいていは断るとすぐに立ち去るのに。
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