消防士は彼女の恋に火をつける



 ランチのあとは一緒にウィンドウショッピングをして、お茶をして、夕食まで過ごした。
 どんな瞬間も彼は素敵で、私はすっかり彼に心を奪われていた。

 ……せっかく今まで恋にならずにすんでいたのに。

 私は隣に並ぶ彼を切なく見上げる。
 夜の中でも彼だけは特別に輝いている。

 彼はどんな人が好みなのかな。
 恋人はいるのかな。

 ……いないから、私と出かけたんだよね? 恋人がいながら女性とふたりで出かけるような人じゃないよね?

 だけど彼に聞くこともできず、帰り道を歩ふたりで歩く。
 私の住むマンションはもう知っているから、送ってくれることになったのだ。

 もう少し一緒にいられるのは嬉しい。だけど……このお礼が終わったら、もう連絡をとることなんてないんだろうな。
 そう思うとさみしくて、つい足が遅くなってしまう。

「ごめん。ちょっと早かったですか?」
 彼は謝って歩調を合わせてくれる。

「大丈夫です」
 本心を言えるわけもなく、彼の気遣いに申し訳なくなってくる。

 公園の横を通り過ぎるとき、ふと猫がいたのを思い出して木を見て、私は驚いた。

「猫!」
 声を上げると、彼もまたその木を見た。

「大丈夫かな、あのこ」
 私は不安になってつい彼に言っていた。

「どういう意味ですか?」
「私が家を出たときにも同じ場所にいて……お気に入りの場所なだけならいいけど……」

「たまに救助要請が入るな。猫が高所から降りられなくなってると」
 彼がこぼしたとき。
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