グリフォンの恋人・神官と王族とワンコの三角関係?・クレルとリーフェスト公
「そのくらい、知っていますから。

祖父のアトリエの資料室でそんな本、いっぱいありましたからねっ!!」

クレルは赤い頬で、言い返した。

「祖父のアトリエ・・・?」

リーフェスト公は、ふと、何か思い当たったように眉をひそめた。

「お前の祖父は、画家なのか?」

クレルはハッとして、口を閉じた。

祖父、母、そして、父の事、神殿の事がばれてしまう。

「いいえ、しがない、名も無い看板絵かきですよ」

クレルは横を向いて、小さい声で答えた。

リーフェスト公はしばらく黙って、クレルを見ていたが、

「これをやる」

首から銀の鎖についた細長い笛を取り出して、クレルに差し出した。

「これは犬笛だ。音がしないが、吹けばグリフォンが必ず来る」

クレルはためらいながらも、手を出した。雇い主の命令は絶対なのだ。

「何かの時に、役に立つかもしれないからな。さぁ、帰れ」

そう言うと、リーフェスト公は玄関の扉を閉めた。

バタン・・・

残されたクレルは、自分の手の平にある笛を見た。

それから・・・指で唇に触れた。

リーフェスト公は・・月桂樹の葉の香りがした。

緑の葉の匂い、森の匂い。

なぜ・・なぜ・・・あの人は、自分で変なウワサを立てるようにしむけるのか。

それに、いきなりキスをしかけるなんて・・・

クレルは宿題をどっさりと与えられた子どものように、ゆっくりと馬の元に歩いて行った。

その様子を、リーフェスト公は窓際のカーテンの隙間から、ずっと見つめていた。

< 56 / 123 >

この作品をシェア

pagetop