柩雨夜 ―終わらぬ梅雨、願わくば君に愛と枷を―
ここの時間がどうしてこんなふうに流れているのかは分からない。
尊さんは、大昔から生き続けてきた人なのかもしれない。たとえそうだとしても構わない。構ってなんかいられない。
無意識のうち、右手が下腹に触れた、そのときだった。
「ッ、あ」
きん、と唐突に鼓膜を突き抜けた音のせいで、全身が強張った。
普段より遥かに強い耳鳴りに、いつかと同じく尊さんも顔を引きつらせている。腕にさらに力を込めた彼は、その音から私を庇うようにしてきつく抱き締めた。
自室の前に確かに辿り着いていたのに、辺り一面の景色がぼんやりと霞んでいく。
靄のような、霧のような、どことなく見覚えのある光景と強い既視感。本来なら敷地内から一望できるはずの町が白く霞んで見えない、あの感じとよく似ている。
次第に強まっていく異音は、心を千々に掻き乱す。気づいたときには、周囲はすでに燻る煙に――いや、霧に白く埋め尽くされていた。
やがて、尊さんは腕の力を緩めた。
ある一定の方向を見つめ、彼はひどく不機嫌そうな声で呟く。
「明日名の前で……やめてくれないか、護」
尊さんは、大昔から生き続けてきた人なのかもしれない。たとえそうだとしても構わない。構ってなんかいられない。
無意識のうち、右手が下腹に触れた、そのときだった。
「ッ、あ」
きん、と唐突に鼓膜を突き抜けた音のせいで、全身が強張った。
普段より遥かに強い耳鳴りに、いつかと同じく尊さんも顔を引きつらせている。腕にさらに力を込めた彼は、その音から私を庇うようにしてきつく抱き締めた。
自室の前に確かに辿り着いていたのに、辺り一面の景色がぼんやりと霞んでいく。
靄のような、霧のような、どことなく見覚えのある光景と強い既視感。本来なら敷地内から一望できるはずの町が白く霞んで見えない、あの感じとよく似ている。
次第に強まっていく異音は、心を千々に掻き乱す。気づいたときには、周囲はすでに燻る煙に――いや、霧に白く埋め尽くされていた。
やがて、尊さんは腕の力を緩めた。
ある一定の方向を見つめ、彼はひどく不機嫌そうな声で呟く。
「明日名の前で……やめてくれないか、護」