柩雨夜 ―終わらぬ梅雨、願わくば君に愛と枷を―
 身分ある者たちの死後婚に擬態用の絵馬を用い始めると、半年も経たぬうち、絵馬伝承は形骸化したと噂が立った。

 一般人には成否など分かるはずがない。つまりは、わずかばかりの能力を宿した一族の者たちが異変に気づき、それをどこからか漏らしたのだろう。
 重ね重ね、己が己の首を絞めているという事実に思い至れぬ連中の愚かしさには目も当てられない。

 このとき、私の心はとうに息絶えていた。
 叶えるべき死者たちの願いを無下にした時点で、真の目的を――正しい力の使い方を放棄したに等しいのだから。

 信憑性を欠いた絵馬伝承は、次第に有力者たちから見放されていく。
 秘境の地で、決して数の多くない民らとともに、脈々と伝承を紡ぎ続けてきたことこそが仇となった。
 独自信仰と深く融け合う我が寺院は、他と比べれば本山との関係も薄い。信仰深い民からの信頼を失い、都の有力者たちとの縁も切れたとあっては、寺院の生命線は絶たれたも同然だった。

 寺院が滅ぶための道筋は、想像よりも遥かに容易に整い、私は禁忌に手を染めた。
 絵馬を用い、裏で暗殺や代行殺害を行って富を得ていた身内を、その者たちと同じ手口で消し去ることにしたのだ。
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