柩雨夜 ―終わらぬ梅雨、願わくば君に愛と枷を―
 焦げた身体と燻る皮膚。
 そのような状態で、どうしてあの方はあれだけ動き回ることができたのか。

『行きなさい、澪。君はなにも知らなくていい』
『っ、兄さま!』
『前に教えてくれたでしょう、君には特別な力があるって。でも僕は、そうだと分かっていても、君だけはどうしても……殺せなかった』

 ひどいことを言われている。
 けれど、私の心を真に突き刺したのは、尊兄さまが口にした物騒な言葉などではなかった。

 皆怯えたように、狂った、祟られたと口々に尊兄さまを穢した。
 けれど違う。そうではない。

 ごめんなさい、尊兄さま。
 どうして尊兄さまが皆を殺さなければならなかったのか。
 どうして、こんな最期を選んだのか。

 私、全部、知ってるの。

『こんな場所も、僕も、早く忘れて、どうか幸せに暮らしてほしい』

 最後の最後まで、あなたは本当にひどいことばかり言う。
 私にできようはずもないと、分かって言っているならなおのこと。

 それをあなたに伝えるには、昂ぶった感情のままにあなたを罵ってしまうには、あの日の私はあまりに幼すぎた。
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