柩雨夜 ―終わらぬ梅雨、願わくば君に愛と枷を―
*
傷痕を見られ、そこに唇を寄せられた。
気づいたときには、君の細い身体を抱き締めて唇を奪っていた。
明日名に触れれば触れるほど、僕の逃げ場はなくなっていく。だから駄目だと、頭では分かっているのに止められない。
やはりそうだ。僕が明日名に惹かれることも、そのせいでやがては感情を制御できなくなってしまうだろうことも、兄は最初から見通していた。
そうやって僕の陥落を待っている。
今まで手放そうとしなかったものを、僕が手放す瞬間を、心待ちにしている。
肌を桜色に染めて喘ぐ明日名は、この世のものとは思えないほど美しかった。
震える吐息さえも自分のものにしたくなり、彼女を掻き抱きながら、僕は腫れて見える小さな唇を奪う。それだけで、明日名は身体にこもった熱を逃がせなくなる。苦しげに眉を寄せる仕種に煽られ、ますます制御が利かなくなっていく。
短く整えられた爪が僕の背を引っ掻き、傷を残す。
微かに走った痛みにすら心地好さを覚えてしまった僕は、やがてなにも考えられなくなる。いや、なにも考えたくなくなる。
明日名。君は、自分のことを浅ましくて醜いと言った。
けれど、君は知っているだろうか。君とは比較にならないくらい、僕が醜い人間なのだと。
僕が君をここに引き留めたのは、単に都合が良いと思ったから。
死んだ兄の慰みものとしてちょうどいい人間が現れてくれた、そう思ったからなんですよ。
絵馬に兄と君の名を書いて、君を殺そうとしたから、なんですよ。
傷痕を見られ、そこに唇を寄せられた。
気づいたときには、君の細い身体を抱き締めて唇を奪っていた。
明日名に触れれば触れるほど、僕の逃げ場はなくなっていく。だから駄目だと、頭では分かっているのに止められない。
やはりそうだ。僕が明日名に惹かれることも、そのせいでやがては感情を制御できなくなってしまうだろうことも、兄は最初から見通していた。
そうやって僕の陥落を待っている。
今まで手放そうとしなかったものを、僕が手放す瞬間を、心待ちにしている。
肌を桜色に染めて喘ぐ明日名は、この世のものとは思えないほど美しかった。
震える吐息さえも自分のものにしたくなり、彼女を掻き抱きながら、僕は腫れて見える小さな唇を奪う。それだけで、明日名は身体にこもった熱を逃がせなくなる。苦しげに眉を寄せる仕種に煽られ、ますます制御が利かなくなっていく。
短く整えられた爪が僕の背を引っ掻き、傷を残す。
微かに走った痛みにすら心地好さを覚えてしまった僕は、やがてなにも考えられなくなる。いや、なにも考えたくなくなる。
明日名。君は、自分のことを浅ましくて醜いと言った。
けれど、君は知っているだろうか。君とは比較にならないくらい、僕が醜い人間なのだと。
僕が君をここに引き留めたのは、単に都合が良いと思ったから。
死んだ兄の慰みものとしてちょうどいい人間が現れてくれた、そう思ったからなんですよ。
絵馬に兄と君の名を書いて、君を殺そうとしたから、なんですよ。